花嫁と咎人
あれやこれや考えている内に、バスルームに着いたらしい。
方向があっていたことに少し安心する。
「連れてきてくれてありがとう。あとは自分で出来るから大丈夫。覗かないで頂戴ね」
「…誰が覗くかよ、このちんちくりん。」
扉から半分体を出し、小さく笑うとフランはバスルームの扉を閉めようとする。
が、俺はそんな彼女の細い腕をもう一度握ってしまって。
「…今日は…その、悪かった。」
「…え?」
不意に口から飛び出したのは、謝罪の言葉。
驚いた表情でフランは俺を見る。
「アンタを危険に晒した。アンタの言う、エルバートって奴の代わりにはなれなかった。」
そうだ。
以前俺はエルバートのようにフランを守ると約束した。
それなのに…。
「…何を言っているの?」
だが、彼女はそんな俺に微笑みかけた。
「ハイネはちゃんと私を守ってくれたわ。今日だけじゃない、今までも。…どんなに嫌な事があっても…何故かしら、あなたといると全部がどうでも良くなってしまうの。」
そして、
「それに、ハイネはエルバートじゃないわ。代わりになって欲しいだなんて私は望んだりなどしない。」
手を離すと…そっと俺を見る。
「これからもずっと、ハイネはハイネのままでいいの。」
「…フラン、」
「今日の出来事で非があったのは私。…これからは、あなたから離れないわ。」
扉が閉まったとき、自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
こんなに胸が痛いのも、気がつかなくて。