花嫁と咎人

 ◆ ◇ ◆

冷たい床。
裸足のままで、小さな窓から星を眺めた。


「…ハインツ。」


かすれる様な声で言った言葉は…星空へ溶け込んで。


「お前は、絶対に帰ってきてはいけないよ。」


もう、涙はとうに枯れ果てた。
短い銀髪を揺らし、その紅い瞳は…遥か果てを見つめる。


生きろ。と、祈りを捧ぐ。


縛られる事はない。
自分の事など気にしなくて良い。
寧ろ忘れてくれても構わない。

こんな人生、こんな世界。

もっと違う世界でお前には、
価値のある人生を歩んで欲しいんだ。

だから、ハインツ。


嗚呼、私の大切な―…。


< 122 / 530 >

この作品をシェア

pagetop