花嫁と咎人

  ◆ ◇ ◆ 


光が、開いた瞳に入り込んできた。
霞んだ視界、トントンというリズムの良い音。
…漂う良い匂い。

木製の天井が見えた。
でも、片方は暗闇に包まれて。

ゆっくりと手を上げた時、包帯に巻かれた手が見えた。


「――…、」


刹那視界を少年の顔が覆う。
すると彼は大層驚いたような顔をして、大声で叫んだ。


「姉ちゃーん!姉ちゃーん!王子様が起きたっぺー!」


…王、子様…?


するとリズムの良い音がピタリと止み、…奥から誰かがパタパタと駆けて来る音がした。
そしてやがて自分の隣で止まると、


「だ…大丈夫か…?」


とても激しい訛りでその人物は問いかけてくる。

一体、何が起こっている?
ここはどこなんだ?

貴方達は…。

起き上がろうとした時…尋常じゃない程の痛みが全身を襲って。


「……う、」


半ば気を失いかけたように、元の位置に引き返す体。


「動いちゃ駄目だっぺ!あんた、凄い怪我してただ…。」


恐らく姉の方だろう。
彼女に言われ、大きく目を開く。

途端に記憶が戻ってきた。
痛みも、悲しみも…苦しみも。
一番に浮かんだのはあの、笑顔。




「姫…さま。」


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