花嫁と咎人

チッと舌打ちされ、本来なら逆切れしても良いはずなのに、


「生き返った…。」


笑いがこみ上げてきて、いつの間にか笑ったまま泣いている自分がいた。
それから次第に泣きの方が強くなってきて…何故かジィンと一緒に号泣。


「マジで、死んだかと思った…!」


そして一層大声で泣き喚くオズとジィン。


うるせぇな…と思いつつ、その後方に目を向けると頭を抱えてガタガタ震えるアーニャの姿が見えて。

ハイネはふらつきながら立ち上がると、アーニャの前に行って座り込む。


「…良かったな、俺がそう簡単にくたばるような奴じゃなくて。あのまま俺が死んでたら、アンタ確実に首無くなってたぜ。」


「………。」


「ま、毒入れる奴を俺にしたのは感謝してる。もし、フランだとかオズにも毒入れてたら…間違いなく俺はアンタを八つ裂きにして闇市で売ってたよ。それか家畜の餌にしてるな。」


小声で物騒な事を並べるハイネに対し、未だにアーニャは震え…下を向いたままで。
本当は一発殴ってやりたい所だが、不毛な争いはもう沢山だった。
ハイネは握りしめた拳をため息と一緒に解き、目を伏せた。


「今回は外れたが、アンタ…薬草学を独学で勉強してんだろ。…だったら今度からは人を毒殺する為じゃなくて、人を助ける為にその知識を生かせ。
そうすれば真っ当な手段で多少の金は巡ってくる。頑張って働いて、その金で両親を呼び戻してやれ。」


「…っ、」


「若い内から人殺しの称号背負っても、後悔しか残んねぇよ。」


ゆっくりと立ち上がり、床に転がるサーベルを拾い上げて鞘に戻す。


「それと、俺は確かに死刑囚だった、が、別に姫様をさらった訳じゃない。寧ろ巻き込まれてやっただけだ。……勘違いするな。」
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