花嫁と咎人

「私も水を汲むの、手伝うわ。」


早速、ハイネの側に寄ってそう言ってみるけれど。


「…いいよ、別に」


だなんて、彼はぶっきらぼうに私を遠ざけた。
でも…顔色が悪いのは目に見えて分かる。

ジィンに案内され洞窟の中を歩いている時に、一連の騒動の事はすべて聞いた。
アーニャがハイネに毒を飲ませた事、そしてそれを運悪く目撃した私が誤解をしていた事。

…ハイネが生死の堺を彷徨った事…。

でも、全ての元凶を辿れば…責任は国にあって。
私はやはり自分を責めずには居られなかった。

でも、それと共にやらなければいけない事も増えた。

それは…この国の貧富の差を出来る限りなくす事。
その為には私がもう一度、この国を立て直さなければ。

勿論それもまた、大変な事なのだけど。


でも…今は目の前の事からどうにかしなきゃいけないわ。

私は黙々と水を汲むハイネの手から、強引にカップをひったくると…代わりに水を汲み始めた。


「何するんだよ、」


そんな私に少し強めの口調で言ってくるハイネだけど、


「ハイネは休んでいて頂戴。…私が水を汲むから大丈夫。」


強引に肩を押して…ハイネを座らせる私。


「…あなたはまだ病人よ、大丈夫。これくらいなら私だってできるわ。」


そう、これでいいのよね…オズ。


「いつからそんな強気になったんだよ」


ちえっと嫌味を言うハイネを見ながら私はクスッと笑った。


それからすぐに水を汲み終わった私は、ハイネの隣に座って…沢山の空気を吸い込む。

草原のいい匂い。



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