花嫁と咎人
しかし父親は気がついていない。
そして信じられない事に、そんなラザレスは息子の異変に気づかぬまま…思い切り背中を木剣で殴った。
…嗚呼、なんて事を。
見ていられなかった。
あまりにも残酷すぎるこの光景を、どうしたら無視できようか。
このままでは息子が死んでしまう。
そう思った時、自分の体は勝手に動いていて。
右手で腰の剣を抜くと…木剣を振り上げるラザレスと息子の間に割り込み、振り下ろされた木剣を弾き返した。
…つもりだったのだが。
先端が綺麗に切断され…ラザレスの手から吹き飛ぶ木剣。
「貴様、」
刹那、物凄い形相で自分を睨んでくるラザレス。
「…お止め下さいませ。」
しかし自分は淡々と口を開いた。
「お言葉ですが、ラザレス様。これは剣術の指導とは言いませぬ。」
「黙れエルバート!女王の犬の庶民ごときが…!今すぐそこをどけ!」
だが、完全に自分の行動は彼の逆燐に触れてしまったようで。
今にも自らの剣を抜き…自分に襲い掛かってきそうな勢い。
流石にまずかったかと思ったが、自分の後ろにいる息子の呼吸の音が聞こえたとき…引いては駄目だと思った。
「ラザレス様、貴方様は一体何をお考えのつもりか。」
「…何?」
「ご子息に多くの傷を負わせているのにも関わらず…まるで虐待のような剣の稽古。これの何処が指導でございますか。」