花嫁と咎人

  ◇ ◆ ◇


コレットがそういった瞬間、オズが立ち上がった。

勿論私も…目を見開く。


「…どうしたんですか?」


隣のエルバートはのんきにしているけれど、私とオズは気が気ではなかった。


―アルベルタ。

それが魔女の名。
そして彼女は姉弟をここで養い…つい2ヶ月程前。

自ら命を絶ったと言うのだ。


まさか彼女の昔話から、こんな方向へと向かうなんて。


「…自殺って…。そんなの、」


立ち上がったオズは再び座り込み、


「あ?どうしただ?」


料理をする手を止め、不思議そうにこちらを振り返るコレット。

そんな皆を見渡しながら…私は手を胸の前で組んで、静かに口を開いた。


「アルベルタという人は…ハイネの大切な人なの。」


自然と潤む瞳。


「とてもとても、大切な人なの…!」


ハイネはずっと彼女を捜していた。
きっとジャックの話を聞いていた時も、嘘だと願っていただろう。

でも、本当だなんて。

もうハイネは…愛する人に、


「…二度と会うことが出来ないわ…!」


胸が痛んだ。
痛むどころじゃない。

とても、辛くて苦しくて…、


何もいえない。


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