花嫁と咎人

生きている人に会う事と、死んでいる人に会う事は、余りにも大きな違いがあって。
肉親を失う痛みはとても良く分かる。


「…でも、こんな事…ハイネに言えない…、」


それ故に、彼に伝える術が分からなかった。

彼がどうなってしまうのか。
それが分からなくて。


でも、その時。


「…もう、ハインツは知ってるよ。アイツも馬鹿じゃない。きっとその為に弟さんに着いて行ったんだと思うし。」


そう言って、オズが立ち上がる。


「それに、ハインツはこんな所で弱音を吐いたらいけないんだ。」


そしてその口から飛び出したのは、珍しく厳しい言葉だった。

オズがこんな事を言うなんて。

でも、いくらなんでも今酷い。
いくらハイネが強いからって…無神経すぎるわ…!


「…こんな所って…!じゃあハイネは何処で弱音を吐くの!?…大切な人が亡くなったのよ!?」


「フランちゃん、」


何か言いたげなオズ。
でも、私もこればっかりは譲れなくて。


「どうしてそんな事言うのか分からないわ…!あなたってほんとうに無神け、」


続きを言おうとした矢先、オズが突然叫んだ。


「フランちゃんさあ…!」


とても怖い顔。


「一体ハインツから何を聞いたの!?」


驚いて動けなくなる私。

…こんなオズ、見たことが無い。


「…な、何って…、彼の生い立ちよ!聞いたわ、ちゃんと!名のある名家の出身だって―…!」



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