花嫁と咎人
「実は、御二方とも私が始末したのですよ。」
信じられない言葉が、次々と私の聴覚を襲う。
「貴女には国王様は病で亡くなり…王妃様は出先で事故に遭った…と、お伝え致しましたが…。」
嘘か本当か。
真実は闇に埋もれて…
「国王は毒殺、王妃は地下牢にて死亡。それが真実でございます。」
私の感情は狂乱への道を辿った。
「……う、嘘よ…。そんな馬鹿げた事があってはいけないわ…。そうよね、シュヴァンネンベルク公…?」
しかし彼は微笑を浮かべたまま首を振る。
嗚呼、そんな…そんな…
「…嫌!嘘だと言って頂戴…!」
耳を強く抑えて蹲る。
頭がどうにかなりそうだった。
怒り、悲しみ、憎しみ、絶望…沢山の負の感情が私を縛り上げて…離さない。
「故に私は、幼い貴女を騙し利用し、都合の良い道具にしようと考えた。そう、この国を我が手中に収める為!私の国を為さんが為に!
その為ならいかなる手段も厭わない。
…そう、この国の民がいくら死そうとも!」
ラザレスは笑う。
まるで悪魔のように彼は笑う。
…否、既に悪魔以上か。
私の心は壊れる寸前だった。
しかし、その刹那。
「黙れ!」
エルバートの声が、一瞬だけ悪夢から私を引き剥がす。