花嫁と咎人

「姫様…剣を貸していただきます。」


そう言ってエルバートもまた剣を構えて…。
平穏な家は、一気に戦場と化した。


「…そこにいるのは分かっている!おとなしく女王陛下を引き渡せ!」


外から響く声。
どうやら王国騎士団が叫んでいるようだ。

そしてその隣に居る黒い貴族服を纏った黒髪の青年は恐らくオーウェンだろう。


「…油断してました。まさか…こんなにも早いとは…」


私達を家の奥に連れて行き、眉をひそめるエルバートに、


「…俺もだよ。」


同じような表情をして唸るハイネ。


だがどこに行っても絶対絶命なのに変わりは無くて。
震える姉弟を私が抱きしめながら大丈夫よと慰めるが…

…大丈夫じゃないのは目に見えて分かった。

泣き喚くレネ、目を見開くコレット。


そして、緊張状態が極限まで達した時―…


…ギィィイ。


誰かが家の中に入ってきた。

ブーツの音を響かせて徐々にこちらに近づいてくるその足音。

息を殺して抱き合う私達に、剣を構えて息を潜めるハイネとエルバート。


そしてついに私達を守る一枚の扉が開かれた時、


「っ、」


「!」


彼らは互いの剣を交差させて、その者の進入を拒んだ。



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