花嫁と咎人
「……い、ッ!」
自分の意志とは反比例して、ぐいっと髪の毛を持ち上げられたかと思うと…
刺青とピアスだらけの男の顔が視界を覆いつくして。
茶髪をオールバックにしたその男は俺の顔を見ると大袈裟に笑った。
「キャプテン!こいつぁ、例の死刑囚ですぜ!」
響く金切り声。
「こっちは女王みたいですよ!ってうわあ短剣がさ、さささ刺さってる…!」
後ろの方でも低い声が。
―フラン…!
クソ、なんで、
「め、ろ…!」
こんな奴等、一瞬で始末してやりたいのに。
手を動かす事は愚か、痺れで声さえ出ない。
「…ああん?何だってぇ?ぎゃははは!キャプテン、こいつらどうしますかー?」
すると奥の方からスキンヘッドで、顔半分に大きな傷のある男の姿が見えたような気がした。
そいつはフンと鼻を鳴らして、
「連れて行け!こんな金ヅルは滅多に来ねぇからな。」
そう言う。
すると周りの集団は声をあげ、口々に叫び…
「………!」
フランが連れて行かれてしまう。
悔しさと絶望の淵に立たされたとき、俺の視界はどんどん狭まっていって。
「ち、くしょ…」
一気に暗闇の底に突き落とされた。