花嫁と咎人

そして指をパキンと鳴らせば、使用人と共に出てきたのは沢山の衣装。

ドレスからスーツまで。
そのバリエーションは豊富だった。


「…何のつもりですか。」


しかし、勿論ルエラにとってそれは全く理解し難いことで。
彼女は彼を睨みつけながら、低い声で言った。


「死に逝く者に…こんな服など必要ないでしょう。」


だが、父は笑う。


「だからこそだルエラ。せっかくの晴れ舞台なのに、着飾らなくてどうする。」


…なるほど。
死に装束という事か。

嗚呼、憎い。
その笑顔をぶち壊してしまいたい。

けれど…もう、それも出来ない。


「さあ、ここから好きな物を選べ。父からの餞別だ。」


唇をかみ締めながら…ルエラは拳を握り締めた。


「用意が出来たら呼んでくれ。私は忙しいからな。」


そして使用人にそう言うなり部屋から出て行ってしまう彼。

憎しみがこみ上げて、仕方がない。
実の娘を殺す事すら…容易いとでもいいたいのか。

ルエラはその衣装達を睨みつけ、重い枷の着いた腕を持ち上げると―…


「―…。」


無言で只一つの服を指差した。




――――…
―――…
――…




そして一時間後。




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