花嫁と咎人

「…なんだ、ドレスじゃないのか。」


部屋に入ってきた父が目にしたのは、


「これでは駄目ですか。」


真っ黒なスリーピーススーツを身にまとったルエラの姿。

銀色の髪は綺麗に整えられ…胸元には白いスカーフ。

もともと中性的な顔立ちのせいか、その姿は女性…というより男の様に見えた。


「…………」


その姿を無言で嘗め回すように見つめる父。


「ふむ。白にはしないのか?」


彼女はそんな父を赤い目で睨みつけながら、


「白だと、紅いスーツになってしまいますから。」


淡々と言った。

すると刹那笑い出した彼。


「そうなった時はもう、ここから上が無いだろう。」


そう言っては手を、首の辺りで真一文字に薙いで。


「―…ッ、」


その瞬間、ルエラの憎悪が爆発した。


「…アンタが憎い…!憎くて憎くて仕方ない…ッ!…死んでも…絶対に許すものか…!」


殴りかかりそうになるのを使用人に押さえつけられ、荒い息だけが漏れる。


「おお怖い。まるであの女のようだ。いや、ハインツとも似ているのか。」


だが、父は笑うばかりで。


「憎むならお前を生んだアルベルタを憎め!裏切り者のハインツを憎め!」


嘲笑っては叫び…侮辱する。


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