花嫁と咎人
「馬鹿…」
ドレスが汚れようと、
「…馬鹿…」
裾が汚れようと。
そんな事、どうだって良かった。
どうして、私なんかの為に。
命までも投げ出そうとするの。
「ハイネの馬鹿…!」
こみ上げるばかりの自責の念。
ハイネへの苛立ち。
でも、それ以上に…
「あなたが死んでしまうなんて、嫌」
彼がこの国の犠牲になってしまう事が耐えられなかった。
零れる涙。
視界がぼやけて、
「…っあ!」
石に躓き転んでしまう。
起き上がろうとしても涙ばかりが零れ、声にならない声が森に消えていく。
弱い。
なんて自分は弱いんだ。
一人で何も出来ないなんて。
走ることすら、出来ないなんて。
手の中のピアスを握り締めては…唇をかみ締めた。
するとその時。