花嫁と咎人
―…パカッパカッ。
地を蹴る馬の蹄の音が聞こえたと思った瞬間、ぐいっと手を引き上げられる。
「やっと見つけた!」
そして強引に立ち上がらされた私の視線の先にいたのは、
「―、アキさん?」
そう、私を死の淵から助けてくれたアキさん。
彼は緑の髪の毛を後ろで軽く結い白衣の姿のままで、優しい微笑を私に向けた。
「…記憶が戻ったのですね。捜しましたよお姫様。」
でも、おかしい。
確か彼は私達が逃げる時、奥で眠っていたはずだ。
それなのに―…
「どうして私を…?」
私が不思議そうに問いかけると、彼はああと呟き話し始める。
「実は既にハインツ君から、この計画の事を知らされていたんです。」
―…話を聞いた所、どうやら彼はあの爆発の後に秘密の通路から外へと脱出していたそうだ。
なんでも計画を知らされた時、ハイネに私を頼むとお願いされたようで。
そして今の今まで馬で自分を探し回っていたと言う。
だが、それ以上に驚くべき事を…彼は私に告げた。
「…貴女を僕の国に連れて帰るようにとも…。」
瞬間。
硬直する体。
「―…え?」
「ですから、僕と一緒に来てください。この国にいては危険です。」
聞こえないふりをしようかとも思った。
…だってハイネがそんな事を言うわけ無いもの。