花嫁と咎人

「ただし、余計な事は言うな。中にいるのは犯罪者ばかりかもしれない。」


それから彼はそう付けたし、私の背中を押す。


「…ま、事実上、俺の方が重罪だけどな。」


彼の自嘲めいた言葉に思わず笑いが零れるも、私は思い切って扉を開けた。


「――。」


思わず息を呑んだ。

小さな店内。
長いバーカウンターに、幾つかの机と椅子。
洒落た音楽が流れるその店内には大人から少年まで、沢山の人達が座っていた。

招かれざる私達の来店に驚いているのだろうか。
…彼らは黙ったままこちらを直視している。

すると丁度私達が立っている近くに座っていたスキンヘッドの刺青をした男が…小さく低い声で言った。


「お偉い国の憲兵さんが…こんな所に何のようだ。あ?」


酒の入ったグラスを揺らし、こちらを睨んでくる。


「あ、あの…」


悲しきかな、蛇に睨まれた蛙の如く速攻で動けなくなる私。
すると突然ハイネが腰から剣を抜き…私を自らの背後に回した。

そして。


「…ここの店主はどこだ。」


低い声で一括する。

再び静まる空気。
すると奥の方から誰かが歩いてくる足音が聞こえた。
それは徐々に近づいてきて…バーカウンターの奥からその姿を現す。


「…あん?一体何の騒ぎだい?」


煙管を手に持ち、適当に髪を結っただけの女性。
年は30代後半頃だろうか…。

彼女はふぅーと煙を口から吐き出すと、私達を見た。

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