DeepLove−彼の弟−
それから食事会が終わるまで、何度も話しかけてきた健斗をあたしは完全無視した。
帰り際、直斗のママとパパに挨拶をしてから、早く帰ろうとしたとき、
また腕を掴まれた。
振り返ると健斗がいて…
「またね?七瀬ちゃん」
妖艶に微笑んでそう言った。
普段、直斗が見せない顔。
直斗と違う表情。
…………っ!!!
気付いてしまった。
あたしが、この男を認めない本当の理由。
あたしはそのまま無視して腕を振りほどいた。
平然をよそおってそのまま歩き出す。
そんなあたしの背中を、健斗は微笑みながら見送った。