蜜蜂
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裏庭。
辺りを見渡すが、誰もいない。
時計を見ると、休み時間はとっくに終わっていた。


「…ばかじゃん俺」


小さく嘲笑しながら、あまり人目につかない奥まった場所にあるベンチに座った。

時間ぐらい気づけよ俺。
授業始まってんのに杏花がいるわけないだろ。
どっか不真面目だけど、基本真面目なあいつが授業サボってこんなところにいるはずがない。
少し考えればわかることなのに。

小さくため息を吐いてベンチの背もたれに体を預けていると、雲がゆっくり流れていくのが見えた。
校舎内から微かに聞こえる教師の声。

ああ、多分これが日常なんだと、ふと思った。
そう思って、こんなの俺の日常じゃないと、反論したくなった。



杏花がいない世界が、日常になってたまるか。




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