恋人以上、恋人未満。
「奈々、あたしと翔太はほんとの恋人じゃないの」
「...うん」
「恋人ごっこ...してて...お互い気持はないの」
「...」
奈々は黙ってあたしを見つめてた。
「ずっと隠しててごめん。なかなか言えなくて...奈々に嫌われるのがこわかった」
「最低だよ、理紗」
奈々の悲しそうな声が静かにトイレに響いた。
「何人の人が王子を好きだと思ってるの?桃果さんもだよ!本気で王子を想ってあんたたちの幸せを願ってる人が何人いると思ってんの!?」
奈々の言葉が深く心に刺さった。
「卑怯だよ理紗!王子が好きなんでしょ!?このまま恋人ごっこのふりしてたらそばにいられるって思ってんでしょ?」
何で理紗には何でもばれてしまうんだろう。
「好きだよ...」
小さくつぶやいたあたしを見て、奈々は黙った。
「たった一つのルールなの。相手を好きにならない...」
「理紗?」
「聞き分けいい子だったんだよ?無理なことしたりしないよ。」
奈々はただ黙ってあたしを見つめてた。
「たった一つのルールも守れないの...好きになんてなっちゃダメなの。」
頬に冷たいしずくが伝った。
「理紗...」
「何度もだめって言い聞かせたよ。でも止まってくれない!そばにいるのがつらい...優しさが痛い...」
「理紗っ」
奈々があたしをギュッと抱きしめてる。
あったかくて優しくて...涙が止まらなくなった。