瞳の中には君が居て



「………………?」
「……………っ…」
「…わ……わかったわ…ごめんなさいね、空星さん。」

そういって先生は授業をはじめた。

ノートもとらず、ぼーっと授業をきいているあたし。
さっきの光景をみて、みんなはひいているようだった。

チャイムがなり、ぞろぞろとでていく生徒。

あたしも出ていこうと教科書とノートをもつ。
するといきなり腕をつかまれた。

「…………っ……?」

驚いて振り返ると穂積ゆきだった。
穂積ゆきはポケットを探ってあたしに何かを握らせると黙って化学室を出ていった。


「…………………」


おそるおそる手をひらいてみると、それはきのうもらったすっぱいレモン味の飴玉だった。


「……レモンだ…」


あたしはそれをポケットにいれて、化学室をあとにした。




< 32 / 193 >

この作品をシェア

pagetop