学園スパイラル~夢と希望と正義とバカと~
「オニ。俺たちは、鬼ごっこの鬼だったのかよ」

 怒りがこみ上げてくるが、手にした折り詰め弁当に生唾を飲み込む。

 透明プラスチックのフタから見える中身は、いかにも美味そうに並べられていて、ずっと走りっぱなしでクタクタの隼人たちは弁当から目が離せない。

「遠慮無くどうぞ」

「すっごく美味しいよ~」

 四人は顔を見合わせ、それぞれに箸をつけた。

「……美味い」

 煮染めの椎茸からじゅわっと染み出る汁はかつおと昆布の出汁だろうか、お袋の味なんて考えた事もないが、疲れているせいかなんだか母親を思い出す。

「良かった」

 微笑む匠に女だったら惚れていた所だ。
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