社長のご指名 *番外編Ⅲ*
「まだマンションにいる?」


『うん、まだ荷物を詰めてる途中だよ。』


「紗衣が目を覚ましたの。」


『本当っ!?よかったー……。お姉ちゃんよかったねっ。』


「うん。暫く入院する事になるし、紗衣の着替えやらの準備もあるから私もそっちに行くね。」


『朔夜さんも………だよね?』


「私と鈴だけ。」





病室を出てすぐにタクシーを呼び、車内で雪菜に連絡した。





フゥーと息を吐くと紗衣の顔が頭に浮かぶ。





紗衣は女の子なのに、また怪我をさせてしまった。





事故にあった時も、今日も、私は紗衣を守る事なんて出来なかった。





紗衣だけじゃない、鈴も守れなかった。





今朝の鈴の訴えはこういう事だったんだと激しく後悔する。





未だ、すやすやと寝息を立て熟睡している鈴の顔を覗き込むと目が熱くなる。





私は母親失格なのかな―――――…。




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