ビターな彼に夢中[短編]
部屋着を来てリビングに行くと
ソファーにお兄ちゃんが寝転んでいた。


『母さんと親父は今日出掛けてるよ。晩飯なに食う?』


『お兄ちゃんのお勧めが食べたぃ』


お兄ちゃんは大学生になってから居酒屋でバイトを始めた。


多分私より、料理が上手。


お兄ちゃんはキッチンで料理を始めた。


お兄ちゃんの背中を見つめながら、私はソファーの上で体育座りをした。


トントントントン…


包丁の心地よい音がする。


お兄ちゃん…


『お兄ちゃんさっきの人、彼女?』


お兄ちゃんは背中を向けたまま返事する。

『ちげーよ。』


ふーん、違うんだ…


『あの人が好き?』


お兄ちゃんは今度は振り向いた


『好きじゃないよ。お友達』


そう言うとまた料理を始める。


お友達?


『でも…さっきの人はお兄ちゃん好きっぽいよね』

やきもちを妬きながら
わざとすねて、こんなことを言った。


『お前ブラコンすぎ。』

お兄ちゃんはそう言いながら
料理をソファーの前の机に運んだ。


『やった。唐揚げだぁ♪』


運ばれたのは
庵がかかった美味しそうな唐揚げとサラダだった。

『いただきまぁす』


お兄ちゃんと向かい合って、
唐揚げを頬張る。

『美味ひぃ~』


笑顔の私にお兄ちゃんは笑って言った。


『早く兄離れしろよな』


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