少数派の宴

<トカゲ>がそちらを見ると、村の若者が数人、農具を持って立ち塞がっている。
いや、もはや鍬や鎌などは農具ではない。凶器だ。

「おい、俺らも連れていってくれよ。こんな村は懲り懲りなんだ」
1人が馴れ馴れしく運転席に近づいた。

「こんな奴、何の役に立つってんだ」
そして<トカゲ>を、嫌悪感あらわに睨め付ける。
<トカゲ>はそれを見返す事も出来ず、四肢を緊張させて俯いた。

「へぇ?」
<煙草屋>は興味深そうに<トカゲ>を眺め、そして若者に向かって携帯電話を差し出した。

「生憎この車は満員だ。これで何処へなりと連絡を取ってくれ」
相手は、まさかこの展開を予想していなかったのだろう、目を丸くして受け取る。

凶器を持った若者達は、顔を見合わせながらそれを下ろした。
携帯を受け取った者は初めて手に入れた機械に興奮している様子だ。

<煙草屋>は彼らを一瞥すると、容赦なくアクセルを踏み込んだ。
「うわ!」
立ち塞がっていた人々は焦って森に走る。

<煙草屋>は表情を変えぬままそこを通り抜けていった。
「――――此処じゃあない所に行けるさ」
という言葉だけを風に流して。

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