ロバの少女~咎人の島
しるし

雉(きじ)の面の青年が島に来た

その日は
冬の始まりの日で
風は冷たく、空は高く快晴だった

小さい太陽を眩しそうに見上げ
ミキはトッコの森へ向かった

新しいキジの男が来たらしいと聞いていたが
ミキは興味なかった

二日続けて森の門をくぐってきたミキを
この日、トッコは入れてはくれなかった
トッコの家の扉は頑なに開くことはなく
あっという間に、太陽は月と入れ替わった

山羊たちも閨(ねや)に帰ってしまった

ひとりで月を見上げながら、闇の中にじっとしていたミキも
しばらくすると、森を出て行った

「メェ」

山羊が小さく鳴いたのは、ミキが森を出た頃だったか

「いいのさ」

トッコは山羊に言った

森からの帰り道
桟橋に人影があるのを見た

明かりを持たないミキの目には、闇が濃く映る


胸の中がざわつく
見てはいけない
近づいてはいけない

それなのに
ミキの足は、人影のほうへまっすぐ向かっていた


鳥の顔
キジだ

ざーっと風が吹いた
風と一緒に男が振り返った


その髪に絡まる飾り紐は

レン

「レン!!」
声を出すより走り出す方が早かった



きっと母がそうしたように
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