ロバの少女~咎人の島
自由

生まれてから一度も、ミキに自由はなかった
自由を知らないミキには
自由が何かわからなかった

不自由は当たり前だった
ヨークと会ったあの日から
ミキは毎日、記録場に行かされた

蔵にも入れなくなった
森にも行けなかった

毎日毎日
ただ記録を付けた

もちろん
ヨークにも会えなかった
自由のある時間には、猫が現れてミキを監視した

猫は、ミキつきの監視になったようだった


「トッコ様、あれではあまりにかわいそうでは・・・」

森の中で山羊を見つめていたトッコに、猫が陰の中から話かける

「わかっている。あのまま、世に返すわけにもいかない。ヨークと接触させるのは危険。フギには、会わせられない・・。私だって、あの子はかわいい・・・・」
「また、森に行こうとしています。」
「会いたくない」
「トッコ様、島はもう・・」

「猫、肩入れしないでくれ。私らには私らの時間が流れている。猫、お前にもだ。」
「はい・・、出過ぎました。監視に戻ります。」

夕方に記録を終えたミキは、桟橋で鯨を見ていた
最近鯨の行き来が少ない

島から世に戻ったのも、レンが最後
来たのは、ヨークが最後

二人は同一

物や食料の行き来も少ないのではないか

振り返ればどこかに、猫の面がいるだろう
海を眺めながら
鯨とりがいなくなった桟橋に腰掛けた


「トッコさんにどうして会わせてくれないの?」
・・・聞きたいことがたくさんある
ヨークのこと
世に戻ったレンのこと
世に戻った、咎人たちのこと

わたしのこと・・

猫の気配はするのに、答えてはくれなかった


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