夜色オオカミ




「相変わらず祈咲はこうゆうの興味ないわねぇ。

この間もサッカー部の先輩に告られてなかった?」



まるで気のない返事をしたあたしに萌花がニヤニヤしながらからかうように言った。



「やなこと覚えてるな。」



あたしは苦虫を潰した顔で萌花を見る。



「かっこよかったしぃ?……で、振っちゃったんだ~」



色っぽい仕草でちらりとあたしを流し見て…あたしは観念したように口を開いた。



「だってあの人あたしの外見しか見てなかったよ……。

か弱そうだから守ってあげたい…とかっ、そんなのちがう……」



先輩に限らず告白はされたことがある。



でも



みんなあたしの大人しそうでか弱そうな見た目が好きなの。



ほんとの《あたし》じゃない。



だからきっぱり断れば、



『こんな子だとは思わなかった』



いつもそんな言葉が返ってきた。



派手めな女の子達からは『調子にのってる』…なんて言われてあまりよくは思われていない。



おかげであたしが信じられる友達は、周りに左右されずにあたしをよく知っていてくれる萌花だけだ。




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