夜色オオカミ




それは美しい満月の夜―――……



その日は朝から胸がざわざわと落ち着かなかった。



満月の日は俺達の力が強まる。



だからだと思っていた。



そして夜になって



俺はいよいよ落ち着かなくなった胸のざわめきを治めつつ、久々に狼の姿で夜の闇へと飛び出した。



俺は毛皮も瞳も一族では珍しい闇夜の色だ。



この色は俺の姿を夜の闇に溶かしてくれる。



スピードも五感も高まるこの姿を俺は気に入っていた。



風になったように駆けていく。



黒い毛皮の先全てから『こっちだ…』と誘われているのを感じるかのように………



俺はあの小さな公園へと吸い込まれるように入って行った。






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