夜色オオカミ




人狼ってみんなこうなの?



あたしは逃げ回る灰斗を見ながら思った。



盲目的って言うか………



一途って言うか………。



灰斗が萌花を見つめる瞳は何をされててもとろけそうに甘い。



「………っ!」



それが十夜と重なってあたしは思わず赤くなった。



あんな目で見られてるなんてたまらないよ………!



恥ずかしくて、いたたまれない………。



甘くうずく胸が苦しい。



あたしが顔をあげると…本当に甘くとろけそうな顔の十夜があたしを見てた。







「………よかったよ。」



十夜はポツリとそう言って、視線を灰斗に向けた。



「アイツは本当に必死で花嫁を探してたんだ。

バカなヤツで鈴木には悪いけどな?」



そうニヤと笑って。



「どうして俺達には運命の花嫁がいるんだと思う?」



「………?」



確かに、どうしてなんだろう?わからないあたしは瞳を瞬くと首を傾げた。



「俺達の半分は狼だから。

遥か昔与えられた狼の力を受け入れるために、生まれてくる時にその半分をそっくり同じ魂を持つ花嫁に預けるんだ。

既に生まれている花嫁には直接…まだ姿のない花嫁にはその母親に…何も気づかないうちに溶け込むように魂の半分が入る。

…出逢っちまったらもう離れられない。

命のように大切な存在になる。


だから…出逢えなければどうしようもない心の隙間に苦しむんだ……。」



何らかの理由で一生逢えないヤツもいる…と苦しげな顔をして。



「命の、ような……。」



想像以上の重さを感じる理由に言葉は見つからずそんな呟きだけがこぼれた。



「ま…、先祖が残した想像も含んだ物語のようなもんだけどな。」



少し苦笑をもらして…でも…と、十夜は続けた。



「《運命の花嫁》を俺達は絶対に大切にする。

それくらい…命ほどに大切な存在なのは事実だ。

アイツは鈴木を幸せにするよ……。」



「………。」








俺達…十夜はそう言って黒い夜色の瞳を細め心配するなと優しく微笑んだ。







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