ぶす☆カノ
「…降りるぞ」
頑張って本に熱中していた私は、降りる駅を忘れていた。
声をかけられ、私は急いで電車から降りる。
またこけそうになるが、なんとか誤魔化した。前を歩く内山さんはこっちを見ていないから、ばれなかったはずだ。
ほっと、肩をおろした。
さっきこけた時?
「な、何やってんの?」
視線を反らしながら、必死に笑いをこらえるように、内山さんは私に言った。
「な、なななんにもっ」
「危なっかしいやつ」
「悪かったわね」
べっと舌を出して、内山さんを抜かして、私はすたすた車両に向かったのだった……
今回はばれなかったし。よかったよかった。
あの時の笑顔が、頭のなかをチラチラしていたけど、気のせいと思いこんだ。