嘘とビターとブラックコーヒー 【短編】


…その視線が俺だけに向いている、これでもう満足だな。



「…いや、なんでもないよ」



自然と口角を吊り上げてそう返せば、優梨は何故か顔を赤くして目を逸らした。



「優梨?」


『…ま、真尋先輩…ずるいです』


「……は?」


『~~~っ、その笑顔!わ、私以外に見せたらっ……見せ、たら……えっと………委員長やめますからね!!』



これでもかと赤く染め上げた顔を背け、優梨は会議室に向かってパタパタと走っていった。



「………ははっ」



どうやら俺は、自分で思っていた以上に彼女から愛してもらえているようだ。


…変なことを疑った、お詫びに。





甘いキスでも―――おひとつ、いかかですか。





『っ!い、いりまっ…………くだ、さい…』



そう言う彼女が、目蓋の裏に浮かんだ。






―――これは遠い、あの日よりずっと後のこと。




【了】


< 64 / 64 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:4

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

佐藤さんは甘くないっ!
天栞/著

総文字数/194,086

恋愛(オフィスラブ)291ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
会社の上司、佐藤さん(32)。 わたしが付けた影のあだ名は鬼畜シュガー (ばれたら確実に殺される!) 佐藤さんはめちゃくちゃかっこよくて、 頭が良くて、仕事がばりばりできて、 だけど傍若無人で怒りっぽくて口が悪くて、 微塵も優しくない。 ―――なのに、なんで? 「柴、お前が好きだ。 結婚を前提に付き合って欲しい」 「………な、なにかの罰ゲームでしょうか」 「はぁ?殺すぞ」 *色々ずれまくってるふたりの どたばたしちゃう、オフィスラブ* (20140904~20150806) ※20150813:恋愛ランキング17位! 嬉しすぎて発狂しました(*´∀`*) 読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます! 佐藤さんは狼なので閲覧は \自己責任でお願い致します!/
春は来ないと、彼が言った。
天栞/著

総文字数/62,185

恋愛(学園)243ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
次にどの季節が巡って来るのか それは誰にもわからない そんな世界で生きる 春に想いを託したわたしと 春は来ない、と言った彼の 少し不思議な恋の話 fin.→May.9th 素敵すぎるレビュー \ありがとうございました!!/
真夏の残骸
天栞/著

総文字数/20,346

恋愛(キケン・ダーク)75ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
―――そこに、感情はなかった。 ただ、蝉の鳴き声が煩くて。 ただ、ただ、無言で見つめ合って。 ただ、ただ、ただ、唇を重ねた。 夏の過ちと、気付いてしまった感情。 ...fin.→Aug.30th

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop