ラブ・アリス
「アリス」
栗色の少し長いふわふわの髪は、真っ赤なリボンで高く結った。
最高級生地で出来た制服も、革の靴も、どうも好きになれない。
5月という中途半端なときに、庶民のわたしが『王宮学園』に転入する理由もわからない。
だからショウに、なんとも言えない微妙な表情を向けた。
「んな顔すんなって」
ショウはわたしより背が高い。
だからこちらを見るとき彼は、少し顔を傾ける。
どんな女も魅了してしまう容姿の持ち主。
わたしの幼なじみ。
わたしの住む田舎町はとっくに抜けて、王宮、そして王宮学園がある都会へと
並んで歩く。
「だって、わけわかんないんだもん」
溜め息をつくと、ショウは笑った。
「すぐ慣れるって。そんなに心配するなよ」
「だって…」
わたしは庶民。
お家柄のいい御曹司のショウには分かんないかな、わたしの気持ち。
それに…
.