いつまでも君を見ている
[自分に聞け]って、わからないから伊勢谷に聞いてるのに……。

「……その微妙な上目遣い、やめてくれ……」

伊勢谷の声はだんだん小さくなり、少し呆れた様子だった。

上目遣い?

そんな事した?

「天然すぎ」

「うん……」

「ま、笑ったし、帰るか」

[笑ったし]って、それだけのためにここに来たの?

その伊勢谷の優しさが心に染みた。

ありがとう。

「うん……!」

そのまま、海を背にして駅に向かう。

「それにしても、天然すぎだよな。あと鈍感。無自覚」

「あの……いい加減止めてくれませんか?」

「え?何が?」

「もういいです」

私たちが電車に乗ったのはもう星が見え始めた頃だった。
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