メルト・イリュージョン
「あ、ねぇ。蛇口の事なんだけど……」
──予想外だった。
まさか、突然扉を開けられるなんて、思いもしていなかった。
確かに、この脱衣所は内鍵がついていなかったけれど。
「……っさいなぁ、何?」
それは、もう叫んだ。
まるで天変地異が起きたんではないかと言うくらい、大絶叫した。
彼は煩そうに顔をしかめて、耳に手を当てていた。
それでも、何故か扉を閉めようとはしない。
「は、早く出ていってください!!」
私は、耳障りな金切り声で叫んだ。
かろうじて腕に絡まっているインナーで胸を隠し、決して見られてはいけない背中は、彼と反対方向に向けた。