メルト・イリュージョン


「あ、ねぇ。蛇口の事なんだけど……」


──予想外だった。


まさか、突然扉を開けられるなんて、思いもしていなかった。

確かに、この脱衣所は内鍵がついていなかったけれど。



「……っさいなぁ、何?」

それは、もう叫んだ。
まるで天変地異が起きたんではないかと言うくらい、大絶叫した。


彼は煩そうに顔をしかめて、耳に手を当てていた。
それでも、何故か扉を閉めようとはしない。


「は、早く出ていってください!!」

私は、耳障りな金切り声で叫んだ。

かろうじて腕に絡まっているインナーで胸を隠し、決して見られてはいけない背中は、彼と反対方向に向けた。


< 41 / 43 >

この作品をシェア

pagetop