難しい恋は遠慮させてください
「佐伯」

「なんだよ?」

柱ごしにごそごそと深川が動いている気配がする。

「今日さんきゅな?」

小さくつぶやいた声は、やっとの想いで聞き取れるぐらいの大きさ。

「どうしたいきなり?」

「別に?じゃあ俺行くから。」

私の頭を軽くたたいて深川は出ていった。

私はホッとして応援席の自分のバックの前に腰を下ろした。

今日は色々ありすぎだ…

もう疲れた。

「リオお待たせ!帰ろ!」

愛美の元気な声にも苦笑いをしてしまった。



家に着いたのは夕方四時頃。

「少し腹減ったな…」

確かお菓子はもうなくなっていたはず。

「今日はお菓子作る気になれないし、買いに行くか…」

私はこう見えて、お菓子作りが好きで得意だったりする。

高校でもクッキーを持っていったり、パイを焼いたりした。

でも今日はそんな気力もうない。

私は近くのコンビニに行くことにした。

「近くだしこのままでいっか…」

私はジャージ姿のまま外に出た。

何買おっかな?

歩き慣れた道を一人で歩く。

後ろから女の人の声が聞こえてきた。

「ねぇあの子可愛くない?」

「マジだぁめっちゃ可愛い!」

━きっとその辺の男の子のこと話してんだな…

そう思っていると誰かが私の肩を叩いた。
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