難しい恋は遠慮させてください
「好きな人は二年生みたいだけどね?」

「えー嘘だーっ!誰誰?」

私のつぶやきに先輩はまたあわてだす。

「ち、違うからね!それに二年とも限らないし!」

「じゃあ一年生?」

結菜ちゃんの追求はとまらない。

先輩もさすがにたじたじで私のほうを何度も見てきた。

私もちょっとしたイタズラ心で先輩のほうを見て言った。

「いいじゃないですか減るものじゃあるまいし?」

「り、りお!?」

先輩は声がひっくり返るほど驚いた。

「名前で呼ばれるなんて二人の関係もあやしー」

結菜ちゃんはまたにやにやと笑いだす。

「ないないない。先輩は私なんか好きじゃないから」

私はあっさりと笑ってそういってしまった。

「えー?どーかなー?」

結菜ちゃんも笑っていた。

でも先輩は笑ってなかった。

少しして結菜ちゃんは帰っていき、先生が部室に来た。

「二人ともお疲れ〜!もう帰っていいぞ?」

それだけいうと先生はすぐに帰っていった。

私と伊島先輩は帰る準備をして部室を出ると、前の方で結菜ちゃんと彼氏くんが肩を組んで帰っていくのを見た。

それを見て少し笑った私の肩に一度何かが触れた。

先輩のほうを見ると顔を赤くして窓の外を見ていた。

今思えばあれは先輩の必死の勇気だったのかもしれない。

ヘタレな先輩のアプローチに気付いてあげられればよかったのにね…
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