楽園の炎
重臣たちを、ほぼ送り出したところで、皇太子は先程夕星を連れて行った兵士が戻ってきたのを見、声をかけた。

「では・・・・・・そうだな。夕星の様子はどうだ?」

「こちらから出たところで、すぐにお気がつかれました。空腹だったようで、今はお粥を召し上がってらっしゃいます」

「粥・・・・・・」

皇太子が呟いて、頭を抱えた。

「地下牢に収監された罪人の食事は、一日二回の雑穀粥ですから。第三皇子は確か、御歳二十一だったかと。量も少ないですし、とても足りないでしょう」

炎駒が口を添える。
朱夏は炎駒の少し後ろに立ち、自分も退室すべきかどうか、迷っていた。

「体力を戻す、第一歩か。仕方ないな。では夕星は、そのまま休ませよう。その間に、私がこちらに入るまでに、夕星が何をしていたのか、教えて欲しいのだが」

皇太子の視線が、朱夏に注がれる。
朱夏はちら、と父を見た。
炎駒は頷き、皆を促した。

「では、部屋を移しましょうか。ここではお疲れになっても、くつろぐこともできません。話は娘から聞くのが一番でしょう」

「そうだな。では、私の部屋へ」

ナスル姫を伴い、扉に向かう皇太子に、アルファルド王、葵、炎駒に朱夏が続いた。
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