楽園の炎
う~む、と三人が首を傾げていると、炎駒と桂枝が帰ってきた。
結構時間が経っていたことに気づいた葵は、じゃあね、と言って、席を立った。
炎駒と少し言葉を交わして扉に向かう葵を、桂枝とアルが送り出す。

「桂枝。憂杏は、いくつだったかな」

葵を送り出して、居間の机に炎駒と朱夏の夕餉を用意していた桂枝に、不意に炎駒が声をかけた。

「憂杏ですか? 確か、二十八になったかと。いつまでもふらふらとして、お恥ずかしい限りです」

眉間に皺を刻んで言う桂枝に、炎駒は笑った。
椅子に腰掛け、水の入った杯を手に取る。

「憂杏は、アルファルドに帰ってくる途中で、夕星殿と会ったそうだな。二人で砂漠を越えてきたらしい。大したもんだ」

「まあぁ。あの息子は、そんな無謀なことを。よりによって、ククルカン皇帝の皇子様を、そのように危険な目に遭わすなんて」

「まぁまぁ桂枝。ユウも、ずっと商人のふりしてたんだから、仕方ないって」

宥める朱夏に、炎駒が目を向ける。

「これ。そのように気安く呼ぶものではない」
< 199 / 811 >

この作品をシェア

pagetop