楽園の炎
「ねぇアル。このリンズ、女性らしいデザインだけど、似合ってる?」

意外な質問に、アルは手を止めて、じっと朱夏を見た。

「お母上のリンズですか? ・・・・・・ええ、何だか、何度か正装の朱夏様を見てきましたけど、そういったリンズよりも、お似合いですわ」

「・・・・・・あたしと母上って、似てるのかな」

ぽつりと呟く。
ちょっとしんみりしてしまった朱夏だが、アルはそんな空気を笑い飛ばした。

「あははっ。そりゃあ、親子ですものねぇ。でも、肖像画を拝見する限り、失礼ですけど、ぷぷっ・・・・・・お母上のような気品は・・・・・・朱夏様には・・・・・・」

「・・・・・・ほんとに失礼だわ」

肩を震わすアルに、朱夏は唇を尖らす。

「いいもん。父上もユウも、似合うって言ってくれたし」

「お似合いではありますよ。それに、わたくしはお母上の外見しか存じ上げませんからそう思うだけで、よく知る炎駒様からしたら、やはり朱夏様も、お母上に似てらっしゃるのでしょう」

だからこそ、そのリンズを与えられたのでは? と、アルが笑う。

「そっか。母上もリンズは嫌いだったみたいだし」

何だか脱ぐのが惜しい、と思い、着替えを渋っていると、宮の扉が開く音がした。
炎駒が帰ってきたようだ。
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