楽園の炎
「いや・・・・・・そ、そんな。いやもう、本当にお恥ずかしい限りで・・・・・・。か、仮にも皇太子殿下の側近ともあろうものが、このような醜態を・・・・・・」

「体質ですもの、仕方ありませんわ。でも、皇太子様について、いろいろ出かけられるのでは? 大変ですわね・・・・・・」

「いやもう、船じゃなければ良いのですがね。船の揺れだけは、どうも。使い物にならなくなるのが、口惜しい。このような薬草があれば、良いのですがね」

照れつつも、自然と苦笑いがこぼれる。
気づけば、随分アルと喋っている。
苦笑いとはいえ、『談笑』できたことに、アシェンは自分で驚いた。

「それでしたら、これをどうぞ」

アルが、懐から紐のついた、小さな袋を取り出す。

「匂い袋です。先の薬草を入れてありますので、首にかけておけば、匂いが僅かですが、常に薫りますわ。船上でも、多少楽にいられるでしょう」

アルに手渡された匂い袋を受け取り、アシェンは、くん、と鼻を近づけた。
この部屋に充満している匂いと同じ、爽やかなハーブの匂いが鼻を突く。

「こういう薬草は、アルシャウカット殿が?」

「アルとお呼びください。わたくしは、少しですけど、薬草を扱えますので。お役に立てれば、幸いですわ」

にこりと笑い、アルはお粥の椀を差し出した。

「食べられますか? もし無理なようでしたら、遠慮せず、置いておいてくださいね」

「ありがとうございます」

椀を受け取ったアシェンに一礼し、アルは、ごゆっくり、と言って、部屋を出て行った。
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