楽園の炎
「どういうこと?」

いきなり出た葵の名に、朱夏は訝しげな顔をした。

「葵王が、朱夏を傍に置いておきたいがために、お付きに抜擢したのだろ? 葵王の朱夏への執着っぷりは、朱夏自身が話してくれたじゃないか」

わかりきったことのように言うユウの言葉を、朱夏はぽかんと口を開けたまま聞いていた。
ユウが、さらに言う。

「つまり葵王は、朱夏を女として見てたってことだよ」

沈黙が落ちる。

呆然としている朱夏から手綱を取り、ユウはまた、身軽に軍馬に飛び乗った。
そのまま手綱を支えに、思い切り身を乗り出し、相変わらず呆然としている朱夏の腰に腕を回す。
朱夏が気づいたときには、身体は宙に浮き、次の瞬間には、先と同じように、ユウと馬首の間に乗っていた。

---凄い技だ---

大きな軍馬の馬上から、片手で人間一人を抱き上げるとは。
しかも、相手が飛びつくとか、何ら協力をしていない状態で、だ。

以前と同じように、ユウに引き上げられたわけだが、今度は前向きであることに安心しつつ、改めて朱夏は、ユウに疑問を覚えた。
だがそれも、ユウに今言われた言葉に比べれば、僅かなものだ。
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