楽園の炎
「ああ、そうそう。父上が、こっちに向かってるの?」

思い出して、朱夏は皆と笑う葵に問いかけた。
葵も、ああ、と軽く頷く。

「うん。一昨日アルファルドを出発されたようだよ。早いよねぇ」

アルファルドの王宮を二日前に出たということは、砂漠を一日で越えたということだ。
朱夏たちより、随分早い。

「大丈夫なのかな・・・・・・。父上、無理してないかしら」

少し心配になり、朱夏の表情が曇る。

「大丈夫だよ。二日といっても、初日早くに王宮を出たら、そう急がなくても、その日の昼過ぎには星見の丘までは行けるだろ。そこから砂漠に入れば、一日半ぐらいはあるわけだし」

夕星も、砂漠に慣れていれば、一日ぐらいで越えられると言っていた。
夜も天候さえ良ければ移動できるのだし、人数もそう多くないだろうから、動きも速いだろう。

「でも、父上が砂漠に慣れてるとも思えないし。そんなに急いだら、気候がいきなり変わるから、返って心配だわ」

「ご心配には及びませぬ。近衛隊より、迎えの者がコアトルに向けてすでに出発しております。早舟ですので、二日ほどで着くはずです」

ネイトが回廊から訓練場に降りて来ながら、朱夏に報告した。

「炎駒様をお乗せする船は、コアトルの皇弟殿下が用意してくださいます。そちらはそれなりの船ですので、朱夏姫様たちと同じぐらいはかかりましょうが、その間にゆっくりとお休みいただけますので。炎駒様は、過去何度かこちらにも来られておりますし、そんなヤワなかたではありますまい」
< 717 / 811 >

この作品をシェア

pagetop