楽園の炎
「炎駒殿、コアトル知事の件、許可が下りそうです。すぐには無理ですが、近くコアトルまで戻れましょう」

「え、ほんと?」

ぱっと笑顔になって、朱夏が振り返る。
それに笑顔で頷き、夕星は、ふと真顔になった。

「それと、もう一つ」

一旦言葉を切り、心持ち身を乗り出す。

「アリンダは、皇子の位剥奪の上、ウラカンの丘にある塔にお預けと決まりました」

炎駒が息を呑む。

「ウラカン・・・・・・。それは・・・・・・」

炎駒はそれだけでわかったようだが、朱夏には何のことだかわからない。
ただ、『皇子の位剥奪』ということぐらいしか、すっと頭に入ってこない。

それだけでも結構な処罰だが、炎駒の驚きようは、それより『ウラカン』というところにあるようだ。
きょとんとして父と夕星を見比べる朱夏に、夕星が補足する。

「ウラカンってのは、首都からずっと北に上がった僻地だよ。塔しかないところだ。民家がないのは、地の力が強すぎるからなんだがな」

「地の力? 土地に、力があるところなの?」

「そう。わかりやすく言うと、塔守が地母神というか。塔には、塔守という者が一人いるんだが、その塔守が罪人を管理しているのさ。塔守はさっきも言ったように、ウラカンの力が具現化したようなもんだから、あそこの塔に入れられることは即ち、生涯をそこで過ごすということになる」
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