楽園の炎
神殿では、すでに式典が始まっているようだ。
裏手の皇族専用の出入り口の前に戦車が止まると、中から何人かの神官が出てきて挨拶をした。

「夕星様、この度は、誠におめでとうございます」

そして、葉っぱの青々した枝を、夕星の頭の上で振る。
次いで、朱夏の頭上でも同じ事を繰り返し、もう一度頭を下げる。

祓いの儀式を済ませ、神官たちは二人を中へと誘った。
神殿内の小さな部屋で、朱夏は今日の式を取り仕切る大神官に引き合わされた。

大神官の前に跪き、祝福を受ける。
それから女神官の手により、最後の身だしなみが整えられる。

「それでは」

神殿の侍女が皆平伏する中を、祭司に促され、進んでいく。
しばらく行くと、前方に家臣の姿が見えてきた。
神殿の中央を走る回廊に出るようだ。

朱夏は思わず立ち止まった。

「朱夏?」

少し前で、夕星が立ち止まり、振り返る。
朱夏は胸に手を当てて、大きく息を吸い込んだ。

少し笑って差し伸べられた夕星の手を、朱夏は、ぎゅっと握った。
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