楽園の炎
光の溢れる回廊に出、祭壇のほうへ。
祭壇の前には、皇帝陛下が待っている。

炎駒は、臣下の列の上座にいた。
朱夏の姿に、炎駒は眼を細め、すぐ前を通ったときに、優しく微笑んだ。

皇帝陛下の前で跪き、式が進む。

心配していた手順は、夕星がフォローしてくれたこともあり、思ったより簡単に済ますことができた。

「では、ククルカン皇家第三皇子・夕星。アルファルド宰相・炎駒が娘、朱夏姫を正妃にすること、己(おの)が命を持って、誓いを立てよ」

皇帝陛下が言い、祭司である大神官が祭壇のククルカン像に向かって祈りを捧げる。
夕星は朱夏の手を取って立ち上がると、向き合う形で朱夏の肩を軽く掴んだ。

「我、ククルカン皇帝第三皇子・夕星は、アルファルド宰相・炎駒殿の娘御、朱夏姫を、我が正妃として生涯愛する。我が命は、朱夏姫に預けることを、この守り刀に誓う」

真っ直ぐに朱夏を見て宣言した夕星は、朱夏が雰囲気に呑まれて固まっている間に、軽く屈んで彼女の胸元に下がる守り刀に顔を近づけると、そのまま口付けた。
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