まどろみの淵にて~執事ヒューマノイドの失われた記憶~


例えば私が、お屋敷の池に棲む小さなザリガニであるとする。


池は今、たいへんな大雨に見舞われている。水はすっかり濁ってしまっていて、餌を取るどころか棲処を出ることすらままならぬ有り様である。


私は普段よりも一層、穴の奥へと後ずさり、小さく体を折り曲げて、雨の過ぎるのをじっと待っているところであった。




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