まどろみの淵にて~執事ヒューマノイドの失われた記憶~
彼女がそっと私の肩を抱いてベッドへ誘導しようとするので、素直にそれに従うことにした。
「お嬢さん、ひとつ教えておくれ。ここはどこなのかね?」
彼女は少し残念そうな顔を浮かべてこちらを見ている。
「ここはお屋敷ではありません。あなたは記憶媒体に軽度の損傷があって執事のお仕事が続けられなくなり、引退されてから三年間、この家で暮らしているんです。新しい記憶をつかさどる領域が損傷を受けてらっしゃる様なので、私の顔もなかなか記憶していただけないみたいですけど……」