モテ彼×ブキヨウ彼女
―――………
――……
―…
「……それじゃあ、お邪魔しました」
玄関先で神崎君が頭を下げる。
その手には、無理やり持たされた大量のサイン色紙の入った紙袋がある。
‘……っていうか、邪魔したのはウチの家族だし’
まだ少しだけズキズキする頭をおして見送りに来たあたしは、隣で微笑む母親たちをチラリと見ながら心の中で呟いた。
‘後でたっぷりと文句言ってやる!’
そう固く決心して。
神崎君は、まだいれば?と声を掛ける家族を軽く交わし、最後にあたしへと視線を向ける。
‘またね’
優しい瞳からしっかりと伝わるメッセージに思わず頬が緩んだ。
――パタン
玄関のドアが閉まったのを確認すると、あたしは早速家族の方へと向き直る。
「ちょっと!
散々邪魔したあげく、サイン色紙まで持ち帰らせるなんて何考えて……」
そこまで言うと、あたしはギョッとした。
なぜなら、母親、父親、弟……家族みんながあたしを見て不気味な笑みを浮かべていたから……。