こちら新宿中央署刑事課
第22章
     22
 安倍川が、


「河北さん、ホントのことを話してください」


 と言うと、河北が、


「ええ」


 と端的に頷き、前島実業内での人間関係や、永嶋殺しに関与した複数の人物、それにおそらく関連があると思われた松岡興業の岩沼専務ひき逃げの事件も話し始めた。


「社内はだいぶ拗れてました。永嶋が営業本部の主任で、おそらく前島社長がかなり手の込んだ策略(さくりゃく)を使って消したのだろうと思います。古河村と内多は単に前島社長に利用されたに過ぎません。それに岩沼専務のひき逃げも綾坂恵作が実行したものです。もうNシステムとかで車両のナンバーも割り出されてると思われますし」


 時折吐息をつきながら、河北が陳述し続ける。


 安倍川はICレコーダーのスイッチをオンにしていたのだし、後ろのデスクでは速記係の刑事が供述を起こしている。


 全く躊躇いなく、河北が話を続けた。


「永嶋が殺害された日の夜、おそらく居残っていた社員の誰かが屋上でのいざこざを聞い
< 122 / 144 >

この作品をシェア

pagetop