こちら新宿中央署刑事課
第6章
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 岩沼専務がひき逃げされてから丸一週間が経った一月二十日の夜遅くまで、坂野も岩永も西谷も、前島実業の永嶋雄一朗が殺害された事件を追っていた。


 検視官の三谷も検視の際に、害者が所持していたと考えられるカバンの口が空いたままだったのが不思議だと言っていたのを思い出す。


 ケータイや財布、それに運転免許証などが取られていなかったから、物取りの線は極めて薄かった。


 ただカバンの口が空いたままだったというのが不自然で、合理的説明は付かない。


 カバン本体は鑑識に回し、付着していた指紋や体液等を鑑定してもらっている。


 仮に鑑定となると、古河村や内多に加えて、両者の協力者であるかもしれない第三の人物が捜査線上に浮上してくる可能性が考えられた。


 どうやら今回の事件は古河村と内多だけじゃなくて、別の誰かが加担しているのだろう。


 何かが引っ掛かる。


 なぜカバンの口は空いたままだったのか……?


 不意に署地下にある鑑識係から連絡が入った。

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